こいにもならない。
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こいにもならない。

hagi

空っぽの金魚鉢を埋めるもの

ネタバレ
2021年1月31日
このレビューはネタバレを含みます▼ 『神様と飛べない使い』でボロ泣きして大ファンになりました。この作品は6年くらい前に雑誌に掲載されたようです。もぉ昔から、繊細な作品を描かれていたんですねぇ…
淡い切ない片思いなんですけど、恋に大人も子供もないんだなぁとしみじみと思いました。幼い恋だからこそ、どうする事も出来ないもどかしさだとか、苛立ちだとか、胸がはち切れんばかりの哀しみがあると思います。大切な人からもらった金魚の死と、終わる片思いを重ねて涙する古賀が、切ないけど美しく見える。あぁ、テーマのシンボルとしての金魚の使い方が見事です。失くした恋と空っぽの金魚鉢の寂しさが、上手く表現されていてhagi先生の繊細さに感動しました。その空っぽの心と金魚鉢を埋めてくれる新しい出会い。デリケートな古賀とは違う明るくお人好しな田島。また失恋相手とも違う優しさに触れるたび、空っぽが満たされていくのが嬉しい。母を亡くし、義理の父も不在がち、義理の兄の結婚(予定)、追い打ちをかける金魚の死。少年が一人で背負うには重すぎる寂しさですよね。自分にはない田島の明るさに救われた気がします。失恋から立ち直るには新たな恋、とよく言いますが、簡単にはいかないけれど、きっかけにはなるかな。田島と二人で笑っていて欲しいですねぇ。
義理のお兄ちゃんも婚約者も優しくて、また違った新しい家族が増えると楽しくなりますよ、きっと。
田島が一生懸命で可愛かったです。尻に敷かれそうですよね(笑)頑張れ。
余談ですが、タイトルの『こいにもならない。』って、恋と鯉がかかって平仮名表記なんでしょうか。学校の池には鯉がいたし、鯉も金魚みたいなテーマシンボル?いや、金魚は金魚だから鯉にはならないし(笑)恋にもならないのは、失恋相手に対してって事ですよね?もう、色々深いわ、hagi先生に敬礼です。
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