このレビューはネタバレを含みます▼
初読み作家さんですが、素晴らしい作品に出会えた事に感謝です。涙が次から次へと溢れて流れ、ページをめくる手が止まり、なかなか読み進められませんでした。オメガバースでこんなに泣いたのは、初めてかもしれません。バース性がそれぞれ持つ苦悩。αだからといって、必ずしもエリート階級の上位でふんぞり返っているわけでなく、特殊性を利用され人間の尊厳を踏みにじられる苦痛な扱い。それが親だから、なお辛いんです。ダレンは他のバース性を見下すようではあるけれど、口は悪いかもしれないけど、案外お人好しで優しいのかもしれませんね。
雨の中、ダレンに拾われた圭太。彼の心の傷は深く重く、胸が痛いんです。Ωの身体で生まれてきた瞬間に、役割が決められてしまう不条理。まるで子供を産むための道具ような考え方。産めない事は、決して役立たずなんかじゃないのに…自分の身体を欠陥とし、役立たずと思ってしまう圭太が哀しくて辛いんです。人間なんです。機械じゃない。だけど、生きるために、自分自身さえΩの身体を利用するしかないのも、なんとも切ない。圭太は誰からも愛されないと思い込んでる節があるけれど、離縁されたあなたを心配してくれる家族がいるんだから、役立たずなんて思わないで欲しい。そして誰より、圭太を愛し、彼を求めて止まないダレンの存在が、あなたの帰るべき場所だから、幸せになって欲しいですね。互いに見つけた帰る場所に、手を取り合って帰りましょう。『おかえり』『ただいま』が言える人がいるっていいですよね。はぁ、目一杯泣きました。良かったぁ。
おっと、同時収録のおじ恋も良かったですよ。