ひばりの朝
」のレビュー

ひばりの朝

ヤマシタトモコ

ヘヴィー過ぎるけど…

ネタバレ
2021年2月13日
このレビューはネタバレを含みます▼ 世の中にこういう女の子の存在がどれほど隠されているのでしょう。

大人びた体型と無垢な心がアンバランスなひばりちゃん、本人が言う通り「何も悪くない」なのに、周囲のクソみたいな人々が彼女を追い詰めてゆく。
腹の中が真っ黒なみちかちゃんや不審な行動が怖いお父さんよりも
私は完ちゃんとお母さんが吐き気がするほど嫌なタイプだと思いました。
ヤマシタ先生の表現の巧みさが凄いです。
いつまでもオンナで、若い娘にオンナとしてマウント取ろうとしてくるお母さん、
辛い目に遭って来た幼い娘に、或いは体の成長に困惑する娘に、
かける言葉と態度があれでは本当に可哀想です。
問題を全くはき違えている完ちゃん、自分の所に逃げてくるひばりちゃんに惚れられてるとか図太く勘違いするなど始めっからクソでしたが。
彼がわざわざお父さんに不要な事を言いに行って(ここだけ何この行動力)、
言うに事欠いてひばりちゃんに「謝っちゃえよ」って
…はぁ?!
私がひばりちゃんの立場なら殺意わきますね!
こうやって皆のズレた言動でこの社会は回って行っている訳ですが、
まさに
解ってないなら口出すな!って感じです。

暴力や育児放棄は勿論あってはならない事ですが、こうやって味方が誰ひとりいない子供が無理解によってじわじわ締められていくのは恐怖です。

独白混じりの弱々しいセリフ回し、場面の切り替わり方、
少しずつズレている嫌な奴の造形、
何より不安定な心理描写がざわざわと迫ってきます。

最後、今まで息を止めて耐え抜いたひばりちゃんがやっと重い枷から解き放たれます。
クソふたりを残して。
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