悪人の恋
」のレビュー

悪人の恋

荷鴣/鈴ノ助

怒涛の後半で胸熱

2021年2月22日
●主人公の女王が懺悔し己の死を望む場面から始まり、その命を狙う亡国の王子の慚愧の念、女王を溺愛する側近など取り巻く現状から徐々に過去へ遡っていきます。祖国を滅ぼした女王の命を弄ぶはずが、彼女の孤独を知り過去を知るほど復讐よりも愛を乞うてしまう。
●細切れに視点が切り替わるサスペンス風のタッチだが、女王を憎んで暗殺する気マンマンの王子が歪んだ悪人ゆえに、死を望む女王を直ぐに殺さずに王配となると強要する場面。不自然であるが、その不自然さをカバーする為に事前に悪人に堕ちて女を豚と言い放ち軽蔑し捨てるド屑ぶりを長々と事前に展開する事で歪みゆえに不自然な選択をしたと納得させる展開にしてあります。女王視点は、ひたすらに過去への懺悔。そこから過去の王子との繋がりが明らかになります。真実を知るほど女王を愛してしまう苦しさと祖国の部下との板挟みの心境を丁寧に描写しているので、ありふれた陳腐なストーリーのはずが読者の心に迫ります。最後が怒涛の展開で尻切れに終わったのが残念。幸せになった後日談があればもっと読者もホッとしたはず。
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