美しいこと
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美しいこと

犬井ナオ/木原音瀬

これはBLというファンタジーではないです

ネタバレ
2021年2月27日
このレビューはネタバレを含みます▼ 自分の中ではBLとは、ファンタジーだと思っている。
それでいうと、この話はノンケ男性が男性を好きになっていく葛藤というリアルに近いものかもしれない。

上巻は女装して街を歩くことでストレス解消していた松岡に災難が降りかかる。助けてくれたのは同じ会社の寛末。この寛末は仕事はできない、要領の悪い男性。でも体裁を誇示しない、他人のトラブルには手助けする人柄に加え、毎日メールで優しい言葉をかけられては、惹かれるなとは無理な話でしょう。

正体をバラし、その上で好きだと告白する松岡に寛末はどうして自分をちゃんと振ってくれなかった?となじりますが、それまでの寛末に会う過程がしっかり描かれてあり、どこで立ち止まれば良かったのだろう?と考えさせられる。

下巻は、あご髭を生やし、葉子(女装した松岡)に外見を似せないようにしている松岡。そんな彼に女の同僚葉山が彼女を紹介すると言って、葉山の彼氏として現れたのは寛末だった。

寛末を忘れて仕事に打ち込む松岡の姿が痛々しい。そして、葉山の彼氏として現れた寛末には、上巻とは逆に松岡が寛末に、自分と会わないように出来たのにと詰め寄るが、葉山が一人で全てを企てていたからそれは無理なことだなと推察。
葉山の友達の藤元も、松岡が葉山と並ぶ寛末を見たくなくて次に会う時は二人でと提案するのに、高校生じゃあるまいにどうして4人で行動するかな?
松岡のぐちゃぐちゃな気持ちが丁寧に描かれてあり、あきらめたのにどうして関わる?と詰め寄るところは上巻と逆です。

でも、自分の感情を一番理解していないのが寛末自身で、それは【愛しい】という感情なんだよと進言したいが、お互いがノーマルな二人だからBL本のように1巻の終わりでは身体の関係が始まるのが無理な話なんだろうなと1本の映画を観終えたような感想が残った。

あとがきSSで漫画のその後が小説で書かれてあり、決して暗闇ではない二人が見えるのが救いです。
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