聖女の魔力は万能です
」のレビュー

聖女の魔力は万能です

藤小豆/橘由華/珠梨やすゆき

優しい物語にする為に省略された部分が…

ネタバレ
2021年3月9日
このレビューはネタバレを含みます▼ アニメ版は追加されたオリジナルシーンはあるものの、漫画版の内容から更に省略された描写がある。
【違和感1】異世界召喚されて、見知らぬ場所と見知らぬ人たちという異常事態・非日常に放り込まれた主人公。不安やら不信感やらで主人公が怒ったのは良いけれども…怒りが鎮まるまでの描写が(小説版でも)バッサリと省略されており、冒頭以降は普通に生活に馴染んでいる主人公の姿に拍子抜けする。元の世界に帰れないと覚悟を決めた描写もなく、元の世界に帰れないと悲しむ描写もなく…新天地で楽しく生活している様が描かれるのみである。こういった主人公の感情・心境の落差に違和感を覚える人も居るだろう。

【違和感2】違和感を覚えた点は主人公のみならず、主人公の恋人ポジションである騎士団長の設定についても同様だ。騎士団長は周りから無表情の氷の騎士と呼ばれており、結婚に対しても冷めているという設定があるのだが…主人公と会って即行で破顔したり主人公へのボディタッチが多めで距離感が近かったりと、設定とは真逆の姿ばかりが描かれている。

【描写不足】主人公の違和感と騎士団長の違和感、どちらにも当てはまるのが「説得力を持たせる為の描写が不足している」ことである。主人公の苦悩や葛藤、騎士団長の心の変化を描写すれば多少なりとも説得力を持たせることが可能だと思うが、物語を重々しくしない為に、あえて描写しなかったのだろうか?優しい物語にする為にキャラクターを掘り下げる描写を省略したという印象。掘り下げがないことで重くない「優しい物語」と取るか、深みのない「浅い物語」と取るかは読者次第である。

【最後に】異世界の王が詫びるべき優先順位が「異世界召喚→息子の無礼」ではなく「息子の無礼→異世界召喚」であること。先ずは誘拐と言っても過言ではない異世界召喚について謝罪するのが筋じゃないかと思うが、国王にとっては息子の無礼について謝罪する方が重要なようだ。それってどうなの?
いいねしたユーザ12人
レビューをシェアしよう!