薫りの継承【上下巻セット・単行本未収録イラスト付】
中村明日美子
このレビューはネタバレを含みます▼
これは凄い。一気に読んで、読後は暫く茫然として、また最初から読み直しました。親の再婚により義理の兄弟となった忍と竹蔵。冷たくされても忍を慕っていた竹蔵は忍の息子の要の入れ知恵で目隠しをした忍と結ばれる……。圧倒的な倒錯感とひたすら暗くて重い世界観。結ばれる姿も芸術的で切なく美しい。妻の茉莉子を抱けずに弟の元に走る忍の表情、遺伝子鑑定の結果を見せられて覚悟を決めたとき、目隠しをせずに部屋で待っていたとき、そして最期の笑顔、この終盤の流れが圧巻。セリフが無くとも忍の心情がハッキリと見て取れて胸が苦しくなった。レビューで悲しい結末を覚悟していたものの、もうこのまま二人で生きていけばいいのにと何度も思った。妻に送った最期の手紙がまるで竹蔵へのラブレターのようで涙。これはあとを引く名作です。
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