オバケ
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オバケ

畑中純

これは名作。

2021年3月21日
舞台は山と川のある一田舎地方、そこに住む人々と『怪異』たちのお話です。怪異、妖怪といってもまさにタイトル通り「オバケ」といった超常の、しかしそれでいて可愛げのあるものがほとんどです(水神様などまさに自然の恵と災害の象徴もいますが)。人間たちとの距離感も「畏れ」はあれど恐怖は無い、といった感じで、なんとなく昔の人はこういう風に自然を捉えていたんだろうなあと考えさせられます。登場人物たちの軽妙な語り口も素晴らしい。舞台が舞台だけに人間の介入による自然破壊や文化や慣習の衰退などがテーマの一つに挙げられますが、そういったものを押し付けがましくなく、オバケたちの視点から描かせるのは見事の一言。主人公?の鯉太郎さんのオバケと人間をとりなす《有能なネズミ男っぷり》は大きな見どころです。本当にキャラクター造形が素晴らしいんですよ、この漫画。ヒステリックな水神様とか哀愁漂う川男、文字通り人を喰ったような狸とか『闇の具現化』たる存在にも関わらず愛らしい闇の世界勢とか…挙げていくとキリがありません。そして何より鯉太郎さんの存在!スケベでちょっと抜けていて、でも女子どもにはとても優しい。自らもオバケでありながら人間たちと実に俗っぽく共存し、どちらの視点に立っても柔軟に物事を捉えられる彼は、先にも言いましたがまさに《有能なねずみ男》。それでいて全く嫌味を感じさせない人柄は、キャラクター造形の一つの極みだと思います。往年の名作をこうして読み返すことができて感激です、感謝!※どうでもよい豆知識ですが、なんとこの作品、某大人気漫画に先駆けて『写輪眼』を登場させています。巻数は伏すので是非見つけてみてください(笑)
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