キス
」のレビュー

キス

マツモトトモ

ピアノの男性講師

ネタバレ
2021年3月22日
このレビューはネタバレを含みます▼ 煙草=大人=かっこいい、こんな今にして思えば無理な三段論法が、まかり通っていた時代があった。実際煙草姿は謎の成熟感を意識されることがあった。これは、未成年には違法だからという、単に禁じられた行為の持つ魔力に過ぎなかったかもしれない。
男性の指=細さ長さに目が留まる=ときめく。セクシーさ、美を感じる。指先は女の感情が揺さぶられることがある。意図せざる仕草で、理屈でない視覚的な刺激。

この組合わせでその講師はずっと表現されている。

主人公カエ16~17歳の話。彼女は小学生の時、ピアノ講師である征行を好きになった。人を好きになる気持ちは年齢無関係。異性オーラを感じ取って、恋愛感情へ、は凄く判る。
経験していない人の世間常識的な言葉を見かけると、寂しからずや道を説く君、と思う。

征行は、カエと同い年の弟の親代わりを務めてきた。弟の為に早く大人になったといえる。故にカエの働きかけが発端なのは納得の流れ。

雰囲気美人的というか、ロマンチックムードを高めるジャズなど、トータルイメージの漫画だと感じる。可愛いとか格好いいとかの印象というのは総体的印象で押し切れるものなんだと、この作品を見るとそう思う。カエと姉、征行と環は、血縁としても見た目が似過ぎ。但し顔は今風、時代を先取りしている。
演奏場面に音は感じないが、空気は伝わる。
空気感にストーリーが乗ってくる感じ。
読者は話の筋を明確に押しつけられなくていいんだと実感。

文庫化に当たり、完結数年後の、顔つきの変わってしまった絵は歓迎しない。
既に本編中主要人物の顔の変化が少しある所に、その上更に変化。あとがき的おまけの絵であっても、同一人物視出来ないと私の読後の後味は悪くなる。

服装や姿形は楽しんだが、全てファンタジーとして楽しむには、今さら生理痛とか、かつての恋人にお供してあげる映画とかよりも違う見せ方をして欲しかった気はする。叔父、環、両親、ナエや朗、頁稼ぎのような話の使い方や狭すぎる世間に、作者か編集の御都合も感じる。
3.75位のつもり。
追記:口が臭いのはよく知っている。キスなんてとんでもない。昔は喫煙者天国で傍若無人な人が絶対多数、隣が嫌がろうと職場も遠慮無し。私の小学校時代は、教師迄なんと職務中吸ってた。昔昔の人は非常識だったのだ。
でも思うにそれはそれ。これはこれ。
煙草は作り物世界の一種の小道具だと思っている。
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