ひと夏のイヴ
」のレビュー

ひと夏のイヴ

サンドラ・マートン/堀田碧

イヴはアダムとイヴのイヴだったのか

ネタバレ
2021年3月25日
このレビューはネタバレを含みます▼ 原題「エデンの園」あっての邦題で、舞台のプロヴァンス地方はそういうつもりなのかもしれないが、二人のやり取りにはアダムとイヴを連想させるものはなく、その記述は直截的説明で只一ヶ所。
ヒロインが素直でないところが結構読んでて引っ掛かった。相手が、女性なら放っておかないタイプであるにしても、ヤレヤレという感じ。
この話、こと2人の関係だけ考えたら、前半はヒロインが、後半は彼リーが、感じ悪い態度を取る構成。
ところが仲直りや再会も安直なので、うわべだけでさらさら進行して歯ごたえが足りない。いとこの性格設定も、ヒロインの略奪の形を避けるためにあるみたいで単純に思える。何より、「自分のことしか考えないのは知ってはいたけれど」としながらも、そのいとこの誘いに乗って渡仏する際には、彼女の悪いところをストーリー上で伏せる(匂わせは有)手法に、その時点でヒロインが信用もする描写、ヒロインを善良な人物に置く意図が見えるようでわだかまる。十代の頃から生活を通じて知っていた筈なのに、騙された側とするお話の中の強調が序盤展開するのが、少々堅実キャラのヒロインに重なりづらい。但し、彼を巡っての火花シーンは唯一パンチがあった。どれほど人柄が悪くなかったとしても、好きな男性を挟むと陰険になる女性はかなりいる。それがいやでこっちが完全に降りていても、しつこく気持ちを確かめに来るのも居て、いちいち反応を窺われたり、面倒臭いものだ。だからそれに輪をかけて、元から自己中タイプが厄介なのはリアリティが無い訳じゃない。けれど、ヴァルの設定上のキャラ付け臭が、この話にどこか浅い印象を与える。

ライターの区別がつかない、とまで頭の悪い恋敵に配されたヴァレリー、タイプライター(WR)と煙草のライター(L)の事であるとは、英語圏話者なのにと、納得し辛い。翻訳でなく意訳にしたのか。文字数に極端な制約ある映画字幕でもないのに変な感じはする。
通貨フレンチフランの話に、ユーロになってそろそろ20年になる今ノスタルジーがあり、携帯の無い別荘の通信環境と共にドラマ的空気を感じていい。
不動産物件、物件情報が少ないのに、下見無しに賃貸契約とは驚く。
ヒロインは当人に触れる事出来ないのに、療養中の彼の黒髪(+ひげ)が状態キープなのもピンと来ない。
車撮影シーンの出し方もわざとらしさを感じる。

日帰りドライブの行きの場面は良かった。
3.45。
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