うそつきあくま
」のレビュー

うそつきあくま

雁須磨子

かわいそうでかわいい

ネタバレ
2021年3月28日
このレビューはネタバレを含みます▼ 大事にされなくても報われなくても、つい追いかけてしまうし振り向いてしまう受・余利の姿がいじらしく痛々しい。
抗いたいのに結局絆されてしまう、恋した方の負けというあの感覚を味わった事がある人には読んでいてグサグサ刺さるのでは。
かといって攻・宇郷が悪人かと言うと、宇郷は宇郷でいつも劣等感に苛まれており、それに反発するようにあの不遜な態度を取っているのだとしたら…。もうかわいくてたまらなくなってしまう宇郷の弱さ。
ところでタイトルの「うそつきあくま」とは誰の事を指していたのでしょう。本心とは裏腹に余利に対して天邪鬼な態度ばかりとってしまう宇郷の事でしょうか。宇郷を追い詰めてしまうとわかっているのに優しいふりをして宇郷の自尊心を崩壊させた余利でしょうか。あるいは両者とも…?
とある曲のタイトルより拝借されたもののようですが、どうしても本編と意味のある繋がりを感じてしまいます。
作中様々な場面で印象的な目のカットや、「それ、どういう顔なの?」と思ってしまう複雑な表情をしているシーンが多々見られます。それらはいずれもはっきり明かされる事はなく、モヤモヤを残しながら展開は進んでいくのですが、はっきりわからないから苦しいのか、わかってしまう事で苦しくなるのか、どちらなんでしょうね。
余利、宇郷どちら目線で読んでも苦しくて愛おしいです。
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