竹宮惠子作品集 サンルームにて
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竹宮惠子作品集 サンルームにて

竹宮惠子

確か、短編集だったよね?、と不思議な感覚

2021年4月11日
「サンルームにて」(1970年12月)が収録されている為に購入。割高感燻るが、ストーリー展開が早い時代の制作であり、3,4冊読んだような気分。コマとコマの中間的存在の徹底した削ぎ落としにより、凄まじいコマ数の少なさでくるくる場面が変わり、台詞だけで進行する作品が、初めに収録の「GO! STOP!物語」。コマ間への想像力は要る。分かり易いが説明的な所は無い。一体今何処に居てどんな話に自分が連れてかれてるのか分からなくなる。タイトルは、まるで、創作の止められない作者のよう。
70年7月から71年5月までの間に発表されたものが集められているらしい。71年2月の「雪の日に」は、「サンルームにて」が「別コミ」誌上の商業的実験としてまずまずだったから、頁数少なめに「週コミ」に出てきた、という気がする。70年代はSFジャンルは多かった。「タムタム&べべ」は、その後の「地球(テラ)へ」の先遣隊に見える。「地球へ」はもう筋を忘れてしまった。かつて読んでいたのに。

当時は漫画全体、絵がこんな感じだった、という時代性ありあり。その環境で、挑戦的というか、クリエイターとして先駆的であろうとした意欲作なのだろうと想像する。「サンルームにて」には耽美の萌芽あり、登場人物の吹き出しの外に、ポエムのようなモノローグのようなナレーションのような手法で、ひとつの俯瞰で物語を伝えている。
このような、読者層を探るかの形で、一種のマーケティングがなされて、そして、こんにちのBL爛熟があるのかなぁと、不思議な感覚。感慨?、いや私はこれを知らずして過ごし、特に世界に入り浸らなかったし、寧ろ山岸凉子先生の歴史物に傾倒したからなぁー。

西洋を舞台とする作品の多い時代とはいっても、竹宮先生はその後センセーショナルな作品を発表して、反響からその作品が大成長を遂げるのも、この系譜にどっぷりだったということなんだなぁと、感じる。

今さら初めの一歩を見に来た好奇心は満たされた。
人に勧めようとか、なんか打たれたとか、楽しかったとか、そういうのとは違う、ぶらり読みに来てしまった感。過激な訳でもなく、オブラートにくるまれた閉鎖的な世界を、その入り口からチラリ覗いた趣。
作品集は時系列的。それも意義ありかと思うが、先生の初期の少年愛物と、SF物とが同じ一冊に綴じてあることに、妙な符合を見た思いもする。

ただ、大変に申し訳ないが私には、3.5から3.9位の感覚だ。
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