紅椿
」のレビュー

紅椿

三田六十

孤独の先にあった永遠の絆

ネタバレ
2021年4月28日
このレビューはネタバレを含みます▼ アカの存在の純粋さ、がいたいくらいに綺麗でした。肉をたべないと生きていけない本性、触れたり、抱きしめようとしても、相手を傷つけてしまう爪、生きていること自体が人から恐怖されてしまう存在。相容れない差異をかかえる鬼と人間が想い合うなんて、針の先をくぐるようなむつかしい命題なのに、それを相手への献身と思いの丈すべてで
乗り越えていってしまう2人の絆が本当にあたたかかったです。
1人、椿の下で飢えに耐えながら、季節が変わるまで佐吉を待っていたアカ。肉を食べる自分を隠すように水で体を洗うアカに対して、すきなものはなんでも食べていいんだよ、そのために自由にしたんだから。
抗えない自分の性を肯定してくれる佐吉の愛で、アカはだんだんと人の心になっていって。いつも無表情だったアカが、争いの場に場違いに、一層鮮やかに笑うシーンがありますが、言葉が通じないアカがやっとできた最大級の愛の表現にみえて、ほんとうに美しかったです。アカに会うまでは、きっと佐吉は自分のことを一生孤独に生きると思って、愛し愛されることを諦めていたのかなと思えて。
人に裏切られてきた佐吉が、アカという異種の存在と出会えて、孤独を超えて、恋を知り、心と体で愛を交わし合う喜びを知れたことはごく自然な成り行きに思えて、奇跡を見るようで嬉しかったです。
愛の深い2人の気持ちが報われて、永遠に続くハピエンになってほんとうに救われました。先生、素晴らしいお話をありがとうございました✨
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