膨大な伏線と知識、世界観が秀逸





2021年5月2日
創作にリアルさを追求し、あたかもその世界が実在するかのように罠に嵌められた作品。歴史上の事柄や、虫や動物の生態系、科学、病気や心理学など実際に起こった事柄や知識まで織り交ぜて書かれるので、どこからどこまでが実在の事柄なのか境目がわからなくなる。そのくらいにのめり込めます。ドボルザーグの『家路』は義務教育を経た日本人であれば誰もが知る音楽。それを要所で使用されることで、暗示のような作用も体験しました。作品は少女の一人称で進行します。舞台は今から千年後の世界。呪力とよばれる神力のような力を皆が手にしていて、それを軸にストーリーが進みます。序盤で伝説や、正体不明の化け物、習わしや、ぞっとするような表現の伏線が散りばめられますが、全て綺麗に回収されます。一人称をうまく利用することで、こちらの胸が締め付けられるようなシーンもありました。ネタバレは一切無しにご覧になることをお勧めします。アニメや漫画には表現できない、文章ならではの良さを体験できますよ。

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貴腐人 さん
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