オールドファッションカップケーキ
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オールドファッションカップケーキ

佐岸 左岸

顔面がぐしょぐしょになりました

ネタバレ
2021年5月3日
このレビューはネタバレを含みます▼ なんとなく仕事して、なんとなく生活して、そんな風になんとなく生きてることに少し不安を覚えたりする30代独身未婚女。
良質な映画を一本観た後のような不思議な読後感とともに散文レビューを書いています。
今作も台詞のひとつひとつや登場人物の葛藤がとにかく刺さる……たっぷり時間をかけて、大事に大事に読みました。
「何が現実的なのか、あんたが決めることで、世間の目に決められることじゃない」
作中の台詞になりますが、こんなこと言ってくれる友人が私も欲しかったと心の底からそう思ってしまいました。
どうすべきか決めるのは自分だと理解していても、他人の意見や目に左右されない道を選ぶのって簡単なことじゃないんですよね。
それを肯定してくれる友人が身近にいるというところに野末の人間性が出ていると思います。

オールドファッションカップケーキは1作目が本当に素晴らしくて、あれはあれで綺麗に完結したように見えたので続編を描かれていると知って正直どうなんだろうとワクワクするような怖いような、不思議な気持ちで発売を心待ちにしていました。
お付き合いを始めたあとのふたりのお話になるので、ひたすらイチャイチャ展開になるのかなとか、それはそれで悪くないなとか、全部杞憂でしたね。
まったく失速することなく、1作目を読んだときの衝撃を2作目でも与えて下さいました。
BL漫画という括りの中で、人生やジェンダーについてこんなに考えさせられるのは初めてです。
悲しいことに現実の世界では理解のある人たちばかりじゃないし、きっと私自身も無意識に差別的な発言をしてしまっていることもあるんだと思います。それでも、オールドファッションカップケーキを読んでるとこんな風に物事を捉えて考えられる人になりたいと望んでしまうんですよね。
BL漫画で、大袈裟ですかね(笑)
年間通して多種多様なBL漫画を読みますが、きっと何年経っても私にとっては特別な作品になるんだろうなという確信があります。
ずっと大好きです。
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