このレビューはネタバレを含みます▼
みよしあやと先生の作品は、数々読んで来ましたが、この作品が一番好きかも。『まくあい』も美しくて好き。
フォロー様のレビューでこの作品を知り、おかげさまでセール期間中に購入出来て、ありがとうございます。
母親にゲイである事をカムアウトして、拒絶されている高校生と、彼の苦悩を受け止めながら自己を振り返る男の恋。
フォロー様のレビューにあるように、読み手の世代や立場などで受け止め方も印象も違うでしょうし、考え方が違えば十人十色の感想が生まれると思います。それがいいか悪いかは別にして、カムアウトの問題を考えさせられるいいテーマだと思います。
息子の告白に、女子の制服で返す母親。これが母親の拒絶を示すアイロニー(当てこすり)だとすれば、息子にとっては辛く哀しい事。母親の反応は、現実を受け止められない戸惑いと拒絶。これは経験した人にしかわからない感情だから、簡単に気持ちの理解を示す事は言えない気がします。恵一がその制服を着たワケは、母親の当てこすりに対して、意地で返したものかと思ったんです。だけど、これは私の浅はかさを痛感しました。それを着る事で母親の拒絶から自分の信念を守る『盾と矛』だったんですね……強いけれど、哀しくて泣きそうです。
周りからの好奇な目とも戦い、どれほどの孤独感だったでしょう。
そんな時に出会った゛オッサン"巡
相談していたさっちゃんが亡くなり、更なる孤独から引き上げてくれた巡。彼もまたゲイ。
恵一が男と恋が出来る可能性に目を輝かし、性対象として見てもらえる事に対する嬉しさを見せた時、盾と矛に守られた自分を、解放出来る希望を見出だしたのでしょうね。戦闘服を脱ぎ捨てて、自分らしく生きる未来。
恵一を見守りながら、母親の抑圧を抑えた巡が、カッコいい。少しでも母親に変化があるのなら……そう願いたい。
さっちゃんも良き理解者であろうとしたんだと思います。
恵一の初恋が実った事が、何より嬉しいですね。二人が恋に落ちた過程が、自然で丁寧に描かれていました。すごーくいいお話でした。