このレビューはネタバレを含みます▼
凄かったです。とにかく凄かった。
こんなにも衝撃的な作品に出逢ったのは初めてです。
まず文字情報だけで全て頭の中に描けます。それほど緻密な情景描写とつくりこまれた世界観。そして登場人物の心情変化。ただの読者のはずなのに、読んでいるうちに登場人物の感情に自分の心が引き摺られ、同化していく感覚を覚えます。苦しい・辛いを自分のことのように感じられ、喜び・幸せもダイレクトに訴えかけています。1文字も持て余す部分はありません。句読点や改行まで、「文」が織り成す力をこれでもかと最大限に発揮した超大作です。
そしてダークな要素が有るべきもの、物語の展開における重要な柱としてしっかりと存在します。個人的に受けが酷い目に遭う作品が大好きなので、某サイトで痛い酷い系のキーワードで作品検索し片っ端から読んでいますが、意外と薄っぺらになりがちのダークな題材をここまで意味のある重たい、それでいて欠かすことのできない要素に昇華させた作品は見たことがありません。本作品に出逢ってしまったことで、今後読むであろう同じような世界観の同じようなシチュエーションの作品に物足りなさを感じてしまうことが今は何よりも怖いです。
幾分か暴力的なシチュエーションに耐性のある方には是非読んでいただきたい。価格以上の価値があります。逆に甘々溺愛が好みの方は避けた方が良いと思います。結果としてはハッピーエンドではありますが、それまでの過程の濃密さに耐えられるよう精神を鍛え上げることをお勧めします。