部長と社畜の恋はもどかしい
」のレビュー

部長と社畜の恋はもどかしい

志茂

考えさせられるビジネス漫画

ネタバレ
2021年5月22日
このレビューはネタバレを含みます▼ 上質なビジネス漫画。1巻読了時点で考えさせられる描写がいくつもあった。①部下の業務量を見極めて人員を適切に割り振ることは管理職の重要な職務である。高負荷が予想される業務を管理職を通さずに担当の判断で引き受けるべきではない。また社外秘資料の持ち帰りの承認は直属の上司のみに権限を与えるべきである。そうしないと管理職は部下の業務状況を把握することができなくなり、人員補充などの対策を取れない。②「彼女のために秘蔵のマニュアルを披露」は美談でも何でもない。マニュアルは共有して利用されてこそ価値が生まれる。業務の属人化を無くすことは業務効率化の基本であり会社の利益にもなる。個人成績よりもチーム成績によって昇給・昇格が決まるように査定システムを見直すべきだ。③ハードワークの許容量は個人差がある。業務経験が少ない若手は自分の上限が分からない。「まだ若いから大丈夫」と無理を重ねて身体やメンタルを壊してしまう。病気療養による停職・退職で人員が抜けるのは会社にとって大きな痛手だ。労働時間が延びるほど健康リスクが高まることは明白なのだから、会社としては繁忙期や緊急事態を除き、社員全員がオール定時で帰れる状況を目指すべきだ。④本作の社畜は仕事が楽しくて進んで残業していると描写されていたが、残業代を稼ぐために必要に駆られて残業している人が多いのではないだろうか。また業務量が多いほど高く人事評価する企業が多いのではないだろうか。残業にインセンティブがある限り残業を減らすのには限界がある。人事評価に時間対効果という観点を取り入れるべきだ。120の時間で120の成果を挙げた人よりも100の時間で100の成果を挙げた人の方が評価されるべきだ。残業時間に応じて賞与査定を下げ残業代を相殺する仕組みにすれば自ずと残業は減っていくと思う。⑤業務多忙により停職・退職・自死したケースは社員教育の教材に活用すべきだ。総務部門や当事者だけが問題意識を抱いても社風は変わらない。全社員を対象とした意識改革には根気強く取り組むべきだ。自分が無理をして倒れたら周りの人間や取引先にどれだけ迷惑をかけるのか、ハードワーカーに自覚させるべきだ。
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