このレビューはネタバレを含みます▼
めちゃくちゃ可愛い。表紙と表紙めくったカラーのイラストの猫たちの何とも言えない表情と生き生きとした動き。瞬く間に心を鷲づかみされました。これは、猫好き如何に関わらず、惹かれるのでは~。
江戸の長屋で暮らす、男気あふれる魚屋清二と、ぶらぶら居候の弥源治と、迷い子のぼんと、それを取り巻く人々(猫々)の物語です。紛れもない猫たちなんですけど、にじむ色気とか可愛さとか、こんな風に表現できるものなのかと、天賦の才に思えてしまいます。すべての登場人物(猫も狸も)がそれぞれに唯一無二のキャラクター性を持っています。江戸時代の猫BLという発想自体が、類を見ない世界だなと思います。
先に色気と書きましたが、弥源治がまとっていた色気がどんどん崩れていくのが可笑しくて笑。ぼんたち子どもと一緒に墨遊び、手にキセルは当てられる、いん乱狐憑きになってみたり、木に吊らされたり…最初の色香はどちらへ~笑。
と、笑いがありながらも、スッと挟まれる切なさにキュッと胸が詰まります。フォローさんも書かれていましたが、私も狸さんの話が印象的でした。心の内の一辺倒でない表れは(人の心の多面的な部分の表し方は)、とてもリアリティがあって、それでいて、とても理想的な温かいところが描かれているように思います。そうあれたらいいなと思わせてくれるへび子先生の優しさが好きです。
あとがきの担当さんとの恒例のやり取り、漫画を描くことの楽しさ、すべての関わりのある人たち(猫たち)への感謝を綴る先生の文字は、とても美しいなと思います。