おかえりオーレオール
」のレビュー

おかえりオーレオール

高津

”オーレオール”がぴったりだと思いました

ネタバレ
2021年7月17日
このレビューはネタバレを含みます▼ 冒頭の階段のシーンの2人の表情は、きっと2人にしか分からない特別な気持ちが込められているんだろうな…と想像する始まり。それなのに、モトと呼ばれる男の子の口からは「なんとなく友達なんだ」という言葉が聞かれます。とても気になる2人の関係。
中2の夏、モトのことを幼馴染以上の対象として意識し始めるカズ。色々なことが重なって、タイミングが悪かったんだと思う。蝶を握りつぶすようにモトを傷つけ、好きになったことを謝らなければならないような恋と、同じ気持ちになれなくても精一杯向き合うモトの姿に胸が詰まります。
その後、恐らく、考えても簡単に答えが出るわけではなく、「いつか諦められる日」を望むとか望まないとかではなく、何となくそんな日が来るのを待っているかのような、高校生になった2人の描写に切なさが募ります。そんな風に感じていた2人の関係でしたが…あらゆる場面で見せるカズのモトを捉える目(視線)に、諦めようとしても諦められない想いの深さを垣間見て、いっそ泣けてきます。そして、18歳の誕生日、うつむいたままのカズと光冠を見上げて歩くモトに、胸がいっぱいになりました。
作者さんがあとがきに書かれている通り、劇的な何かが起こるわけではなく、ゆっくりとした流れの中で、2人が大人になっていく過程が、じわじわと染みてきます。2年後の2人の関係も読者にははっきりとは知らされないけれど、2人の表情が幸せそうで満たされます。
フォローさん方のレビューで気になっていた作品、とても良かったです。
ちなみに、先日読んだ「アメコヒメ」の作者さんと知って、驚いています。
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