このレビューはネタバレを含みます▼
レビューに東北の子が主人公とあり、東北に縁があったので懐かしくなって読んでみました。
表題作「僕から君へ」は亡くなった友人の追憶から始まるストーリー。子供の頃の無邪気(で残酷)な振る舞いと大人になってから気付く事情を振り返りつつ独り淡々と友人(夏己)を偲ぶヒロム。性格、生い立ち、方向性等が違っていても、子供の頃に一度友となればその関係はどちらかが続けようと思えば続くもので、私にも覚えがあるなぁと今は疎遠になった友を思い浮かべながら読み進めました。ヒロムとは別の道に進み決して深い親交があったわけでもなかった夏己が密かにしたためていた胸のうちを思いがけなく知った時、後悔と懺悔と懐かしさと感謝とが入り混じって堪らず涙したヒロムに私も胸が詰まり自然と涙が溢れてきました。ありがとう、ありがとうと何度も綴られた言葉、夏己はどんな想いでこの詩を書いたのだろうと想像するだけでたまらない気持ちになってしまいます…。
2作目「東京少年物語」は親の離婚で図らずも東北の母の実家に引っ越すことになった吉蔵と従兄弟である鷹ちゃんのお話。複雑な子供心が見事に表現されていて胸を打ちました。また病室で歌った海の歌、歌詞全てを読むとなんて情緒豊かで美しいんだろうと年齢を重ねた今だからこそ染みるものがあります。2作目もこの作者様に泣かされてしまいました。
3作目は「がんばってや」。進学を機に上京した東北の若者が主人公。方言を気にして言葉を発するのを躊躇ってしまう気持ちは私にも覚えがあるので凄く身近に感じます。そういう地方出身者の悲哀をうまく表現されていて視点がいいなぁと感じました。
この3部作、それぞれがとても胸に響き心が豊かになりました。本当に読んで良かったです。