ノイズの空にカナリア【SS付き電子限定版】
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ノイズの空にカナリア【SS付き電子限定版】

風緒

満足です!

ネタバレ
2021年8月7日
このレビューはネタバレを含みます▼ 作家さん買いです。人の悲しみの音が聞こえる伊之瀬の耳に、ある日届いた音は今まで聴いたことのないほど美しい音。その音の主、真澄が見つめる先に彼の実の兄がいた。悲しみの琴線があるとしたら、その奏でる音はきっと美しい音色なのだろう。羨ましいような憂鬱なような実に切ない能力である。真澄は兄の代わりに、伊之瀬は美しい音色に恋してカラダを重ねる。「どんな感情も殺すな。全部俺が聴いてやる」伊之瀬の言葉には音への興味以上の深い愛情を感じる。真澄が剥き出しの欲望を伊之瀬にぶつけた瞬間聴こえたのは酷く歪んだ醜い音。もう作家天才!真澄は伊之瀬によって兄への報われない想いを昇華し、伊之瀬も他人の悲しみに押しつぶされていた自身の感情を取り戻す。二人の恋が穏やかに静かに深まっていく。丸々表題作で大満足です!
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