このレビューはネタバレを含みます▼
作家さんの台詞回しがとにかく癖になる一冊。
天使や悪魔などファンタジーな設定を持っていながら、十川が現世に溶け込んで相談所みたいになってるのが地味に面白い。また、設定に胡座をかくことはなく、本作の魅力の土台は間違いなく作家さんの持ち味である台詞回しやその問答の面白さにあるだろう。
最初は煙に巻いたような物言いで主人公の圭を翻弄していた十川だが、一野の登場で物語が十川の過去や圭との関係性にグッと踏み込むことになり、ここからのやり取りが更に面白い。
それまで翻弄されっぱなしの圭が後半に行くにつれ逆に十川を翻弄したり、より図太く逞しくなってゆく。
ミステリアスな十川の秘密を知りたくて読んでいたはずなのに、読み終わる頃には十川や一野、自分自身も皆まとめて圭のことが好きになっちゃってる、悪魔も堕天使もマイペースに魅了してしまう人間の圭が愛しくなったそんな一冊。