エースをねらえ!
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エースをねらえ!

山本鈴美香

テニスだけじゃない

ネタバレ
2021年9月9日
このレビューはネタバレを含みます▼ 1973年から1975年および1978年から1980年まで「週刊マーガレット」に連載され、テニスブームを起こしたスポ根漫画。アニメにもなって観てました。図書館で借りて読んだのですが、あまりにもよかったのでレビューさせてください。岡ひろみという目立たない高校1年生の少女が宗方コーチに見出だされ技術と精神力を磨かれ成長していくストーリー。テニスの魅力がふんだんに伝わってきますが、ラブストーリーとしても秀逸で、いかにして生きるかという死生観にまで通じていきます。「男なら女の成長を妨げるような愛し方はするな」宗方コーチの言葉ですが、これはコーチが自らに課したことでもあったのでしょう。コーチが藤堂にひろみのことを語るシーンでは胸が締め付けられる思いがしました。今までずっとどれだけの思いをされてきたのかと。愛が深くて涙涙です。若い頃のコーチは重度障害児との関わりの中から短い一生でも精一杯生きることの貴さに触れ、鬱屈した心情を自分のできることをやり抜く情熱に昇華していきます。「エースをねらえ!」は当時大ブームを起こし、多大な影響を少年少女に及ぼしました。初めは4ヵ月程の長さのスポ根ものをという依頼がもう何年でも描けるだけ長~く描いてという怒涛のお願い攻勢に転じたらしいです。松岡修造さんが海外遠征の間にいつも荷物に入れて愛読していたというエピソードがありますが、「修造チャレンジ」は錦織圭さんが世界に行くきっかけになりました。山本先生が早くに筆を折られたとレビューにあり、調べましたら本当に1984年頃にはもう描かれなくなっていたのですね。連載中に入院されたともあり、作家人生は完全燃焼されたのかなと思いました。作中に短い一生が人の80年に劣るとは思わないという言葉が何度か出てきますが、素晴らしい作品を世に出された功績は残り、この作品は読む人の心を揺さぶり続けると思います。「男にささえられていない女は弱い」という言葉や後半先輩たちがひろみのためにサポートしまくる展開は昭和感がありました。できれば切磋琢磨し、それぞれの競技人生を全うして欲しかったです。「全員うさぎとび!!」も懐かし~。今思うとなんでみんなうさぎとびさせられてたのかな?絵や当時の風俗(生活上の習わしや遊び)など古めかしいところは確かにありますが、今でも心の部分で通じるものがすごくあると思います。私はまた読みたくなっていつか電子で買っちゃいそうです。
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