毎日、きみに恋をする
」のレビュー

毎日、きみに恋をする

かつらぎ

タイトルの可愛らしさと真逆な読後感

ネタバレ
2021年9月11日
このレビューはネタバレを含みます▼ 記憶喪失や記憶障害を扱った作品の中でも独特な読後感を生む作品だった。


3年前の事故で健忘と記憶障害を負った幸平を献身的に支えるかなた。毎日記憶がリセットされてしまう幸平にとってかなたは見知らぬ赤の他人で、毎朝「お前は誰だ」と言われるかなたが本当に切ない。

事故から3年後の世界から物語がスタートするから幸平とかなたの馴れ初めはかなたが幸平に話して聞かせる部分でしか知ることができず、かなたの深い愛よりも幸平に深い傷を与えた新見に色々な感情を持っていかれてしまい、幸平の記憶障害に光が見えた喜びよりも我欲の執着は本当に怖くて醜いという感想の方が強く残ってしまった。

ただ、才能はあるのに孤独で孤高で傲慢で、幸平の才能を妬んで歪んでしまった新見を最後まで歪んだ人物として描ききってくれたのは個人的に良かったと思う。あれを彼も苦しんでいたんだ……なんてやられたら読後感は最悪になっていただろう。
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