このレビューはネタバレを含みます▼
フォローしているレビュアーさんのおススメで読んでみて、LGBT学習の題材にしても良いのでは、と短編ながら質の高さに感心した本作。レビューもそれぞれ読み応えがあって素晴らしく、私が付け加えることはないか、と思っていたのですが、先日LGBTパレードのドキュメンタリー番組で、ゲイであることを隠して結婚したものの、やっぱり性的指向は変えられず妻子を置いて出奔してしまった方が、子どもから、妻が自分について「相手が男だったら仕方がない」と話していた、案外それからも元気に過ごしていたらしい、と語っているのを聞いて、ゲイの主人公の元妻フユミさんのことを考えるようになりました。フユミさん、ナツキ君の養育を主人公に委ねて離婚しています。現実には親世代に偏見がある場合異性愛者側が引き取る例も少なくない(養育も親世代が引き受けて)ようにも思われるところ、フユミさんは主人公(名前付けてー!)の人間性に惹かれ、結婚してからも信頼を置いていたから子の養育を委ねたのでしょう。会えば文句は言うものの、自分個人に問題があるからではなく自分では乗り越えない理由で夫婦という関係は終えても、親子としての関係は続く中、根幹には主人公に対する人間愛と感謝の気持ちを抱き、それを伝えられるフユミさん、改めて素敵だなと思いました。自分が同じ立場だったら...相手の人間性に惚れ、子ももうけ、しかも逃げずに子を育ててくれるなら、他に結婚を考えた人がいない限り、仕方ない、でもあなたと結婚できて良かったありがとう、という気持ちになるかな。結婚して暫くすると夫婦も家族になり、あるがままを受け入れるようになるから。あ、やっぱりゲイだったん、早く言ってくれたら良かったのに、って感じかな。番組で発言が紹介された元妻さんも、同じような気持ちだったのではないかしら。素晴らしい作品は、メインでない登場人物まで素敵。作者様の力量、さすがです!