このレビューはネタバレを含みます▼
沢山のシグナルを送ってみてもいつも違う相手を見ていた、仕事を言い訳に違う相手を抱いていた。愛し合って二人だけの時間を過ごし幸せな時が続くと思っていたのに、いつからか涼生の中から自分は消えていた──ただ黙って何もなかったかのように涼生と過ごさなければならない日々。本当なら知念の最期は涼生と迎えられ、涼生の腕の中で安らげたかもしれないのに、そうはならなかった──最終回まで3話、番外編を入れても6話になりました。どんな内容であるかは韓国の読者さんの解説から知っているのですが、数えるほどになったこのお話をいよいよ自分の目で確認できます。
涼生がもっと早く、知念がどれほど大切な存在なのか、知念の病気に気付いていたら‥知念が伝えられなかった思い、愛していると、悲しさや淋しさ、病と一人で対峙するのは辛い、そばにいて欲しいと吐き出し、都度伝えていたら‥涼生が知念の元へ帰るのがもう少し早かったら、知念にもう少し時間があったら、二人は今より幸せな最期を迎えられたのでは‥
他レビューにあるように涼生は酷い人だと思います。そして淋しく可哀相な人だとも思います。自分の真意に気付けず知念を手放してしまった‥また、同様に知念も可哀相な人だと思います。愛する、愛した涼生の元を離れなければならなかったのですから。
たった一度のボタンの掛け違いが全てを台無しにし、誰一人として報われることのない話のようですが、その憂い、悲しみ、苦しみ、淋しさ等の不の思いと対称に、どこかしらで胸がほわりと温かくなる瞬間が少しだけあり、それらが繰り返されながら完結した話と思います。涼生の元を去った知念が花を見て涼生との出会い、過ごした日々を思い出したように。
最後に知念が選んだ避難所であり最期の時を過ごした佑樹。愛する人を抱きしめることができ一見よい結末を迎えたかのようですが、本当に幸せだったのでしょうか。知念から口では涼生とは別れ会うことはないと言われながらも、彼の瞳は涼生と過ごした日々を追っています。それを端で見て、知念の遺言を聞き、最期を看取る‥自分の腕の中に知念がいることだけならば幸せでしょうが、彼の愛は本当の知念には届くことはなくい、哀れで悲壮な役のように思います。
涼生のと永遠の幸せを探し、共にいる日々が恍惚と苦悩が常に背中合わせだった知念のお話だと思いました。