ふつつかな悪女ではございますが
」のレビュー

ふつつかな悪女ではございますが

中村颯希/ゆき哉

とりあえず第一部完結

ネタバレ
2021年10月3日
このレビューはネタバレを含みます▼ 最初は彗月の嫉妬から始まった単なる後宮風コミックなのかと思いきや、意外なサスペンス展開に進みます。1巻では不遇な境遇に貶められた玲琳にハラハラしながらも彼女の行動が周りの心を動かしていく様子が爽快で心を奪われますが、2巻に入ると入れ替わりが発覚後の玲琳が無双状態になるのでエンタメ的にはハラハラドキドキが失速したかな。後半になり恋愛要素が入ってきますが、もし玲琳が皇后になったとしても皇帝はお役目上、他の妃のところにも通わないといけないわけで、読者的にはもやもやしそうですね。鷲官長は最下位の妃の下賜も可能という記述があったので、それが辰宇とくっつくという伏線なのか、はたまた尭明が皇太子の座を手放すような事態もありうるのかもと想像はつきません。コミックの方は漫画ならではの表現の素晴らしさ(個人的には玲琳が胡旋舞を披露した時に観衆の目を釘付けにしてる様や、傷だらけになった玲琳に対して弓を射るのを制した時の辰宇と目線だけでやり取りするところが良かったです)がありますが、小説版も作者さんの言語的センスの良さや文字だけでも感情を揺さぶられる力量(最後の皇后と朱貴妃のやりとりなど)があると思います。さらにおまけエピソードのしんでれいらと火薬売りの少女はツボに入って最高でした。作者さんの笑いのセンスにも感服です。追記: 5巻まで読みました。第一部の起承転結が素晴らしかった分、それを超えるインパクトがないままマンネリしてきた?ような印象です。無双すぎる玲琳にも人間くさい感情もあったのね、という新たな発見がありつつも、慧月が完全にワンパターン化していて、トラブルに巻き込まれるとパニックになってヒステリックに喚き立てるのは変わらず。結果、悪人ではないものの、子供っぽく器の小さい人物という印象が上書きされないまま、読者の愛着が湧きにくいキャラになってしまっているのが残念。5巻まで来るまでに人間的な成長をもっと盛り込んであげてほしかったです。第一部では、慧月と入れ替わってしまったために、周りからそっぽをむかれることになりつつも、逆境にくじけず内面の美しさで心を通じさせていくという過程が一番面白いところだったのですが、今では他家の妃による策略でピンチに陥りつつも、玲琳無双状態は変わっていないので、もう少し他登場人物にもスポットライトを当ててほしいかなと。あと尭明と辰宇が完全に空気状態になっているような笑。
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