さわやかで秀逸なラスト





2021年10月8日
itz先生の作品でいうと、”ぼくらが恋を失う理由”系統ですかね、リアルBLの王道ですが、表紙デザイン通りの繊細でステキな作品です。DKもので、特進クラスのいつも一人で行動している物静かな優等生タイプの陽×いつでも友達に囲まれて女の子からの告白も日常茶飯事の陽キャ翔太。正反対なのに、よく目が合い、お互いなんとなく気になる存在だった二人が、ふとしたきっかけで、屋上に上がる踊り場で話すようになるところから、ゆっくりとふたりの時間が動き始めます。タイトルは、正反対の二人である「対照」という意味合いですが、陽は、誰にも言えない自分を抱えていて、過去のトラウマから、深く他人と関わるのを避けて”表”の仮面を被っています。また、翔太も、口にしたくないコンプレックスやジレンマがあり、それをごまかすために、”表”の仮面を被っています。自分のなかと外が「対照」でもある、そんな二人が出会うことによって、お互い、相手や自分と向き合い、正直に、前を向けるようになっていきます。悩み、劣等感、弱さ、強さ…繊細なDKの心情の推移が丁寧に描かれ、二人がはっきりと付き合うことになるまでのお話です。翔太と、その周りの重要な役割の友達が明るいキャラなこともあり、どっしりとした重さより、清々しく軽やかな読後感でした。本編のラストは秀逸で、タイトルの深さも相成り、ほろりとしました。その後、描き下ろしで陽のトラウマになった彼の回収もきちんとされており、その数ページもすごくよかったです。本編310p、描き下ろし10p、特典1p、全326p。最後まで二人のHはなく、特典pまで読んでも、どちらが受け攻めかは、想像の域を出ません(笑)。

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