このレビューはネタバレを含みます▼
ど直球、どストレートの猪野さんの台詞の逐一が心にストンと落ちました。
彼は媚びを売らない。人に好かれようと思わないから、言葉を飾る必要も、選ぶ必要もない。全部、本心。
表裏がないと言えば聞こえは良いけれど、誰もがむき出しの正論を受け止められるわけでもなく。そのことで左遷にあい、孤立し、理不尽な仕打ちも受けてしまう。生きにくい性格だな…と思いました。
人はロボットではないから、正論は必ずしも正論でないことを学んで来なかった結果なのでしょう。猪野の言いたいことは分かるけれど、猪野が理解できないタイプの人間が存在することもまた事実で…。世知辛い…。
そんな猪野が熊ケ谷と再会。熊ケ谷に対する自分の気持ちが分からず、自分でも理解出来ない行動を取る猪野が、愛おしかったです。
熊ケ谷の会社まで行ってみたり、サッカー見に河川敷に行ったり。もぅ、それは好きなんです。あなたは熊ケ谷を好きなんです、と教えてあげたいくらい、無表情で葛藤する猪野が可愛いかった。
駅で熊ケ谷を待ってた時は、熊ケ谷が好きだと自覚はあったんでしょう。ご飯の誘い方が素直じゃない(笑) 不器用すぎます、猪野さん。
居酒屋で飲んだ後、コーチと一緒に帰った熊ケ谷を外で待ってた猪野。いつまで待つつもりだったの?「一緒に帰って欲しくない」って言えなくて、寒い中、1人、外で待ってたかと思うと、ホントたまらない。熊ケ谷の気持ちが一気に傾いたの、無理ないです。アレはくる!
猪野の行動の1つ1つに好きが溢れていて…。言葉にされない猪野の想いが、心に染みました。
大人なビターな恋愛。猪野が無表情だし、甘い台詞は皆無なので分かりづらいですが、小説ならば行間を読むと言いますか、漫画ならではの言葉にされない行動に思いを馳せると言いますか。含みがある雰囲気がとても素敵なストーリーでした(^^)