メロンの味
」のレビュー

メロンの味

絵津鼓

喪失と癒しの物語

2021年10月12日
今までもこの作者さんのお話は好きで読んでいましたが、絵柄が変わったのも相待って、過去作とは一線を画する作品かなと思います。最初は軽いテンポで始まるので、よくあるゲイとノンケの同居物(なんやかやあってラブラブになるやつ)なのかなーと思ったのですが、物語が進むにつれて、これは喪失の話なのだと分かります。失ったものを埋める何かを持たない二人が、そうと知らず出逢い、少しずつ心を寄せて行く…そんな過程が丁寧に描かれています。セリフと共に細かく描き込まれた背景や小物、脇の人々が、彼らのキャラや生活を物語っています(ベッドサイドのラグとその上のバブーシュとか凄く好き!)。特に木内さんの心情については、彼の佇まいや彼から見える風景で、何も語らずとも伝わってきます。元々絵の上手い方ですが、さらに素晴らしくなりました。辛いテーマではありますが、最後は一歩進んだ二人の姿があります。上下巻ですが、ボリュームを感じずに一気に読み進めてしまう、重いだけでなく良い意味での抜け感もある作品。あまりBL読んだこと無い方にも是非読んで欲しい作品です。
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