恋は異なもの困りもの
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恋は異なもの困りもの

日月ニチカ

今後の活躍にも期待を込めて

ネタバレ
2021年10月17日
このレビューはネタバレを含みます▼ 『ロング・ディスタンス・ロマンス』がとても、とても大好きな作家様。あの作品に魅了されて、日月先生の新しい作品を待ち望んでいました。『ロング~…』の短編集3作品は、どれも恋の切なさとトキメキが繊細に描かれた素敵なものばかり。エチもなくBL初心者さんには、ぜひオススメしたい作品です。前作が素晴らしいと、必然的に次回作のハードルが上がるというもので、ましてやデビューコミックスともなれば緊張もしてしまうかも…ですよね。

表題作品は、噛み合わない二人の高校生のお話です。どれだけ頑張って努力しても、成績で深町に負けてしまう生真面目な武田。チャラくて努力してなさそうな深町に負けるのは不本意だし、そんな深町に告白されるなんて…という展開。
深町とは相容れない武田の振り回され様が面白いけど、ケンケンと怒りっぽい武田を見ると、これをどうやって恋に持っていくのか見所です。
チャラい深町の複雑な家庭事情が見えてくるにつれ、彼の能天気な行動は、そうでもしていないとやるせないのかな、と思いました。クラスメイトから『宇宙人』と呼ばれるのはどことなくいい気がしません。容姿はどうする事も出来ないけど、勉強が出来るのは、複雑な家庭環境では努力せざるを得なかったかもしれない。何でも出来るスーパースターでも、宇宙人でもない。クラスメイトに本音を見せないのは、そういうところかな、って気がします。だからこそ、ライバル心むき出しで真っ直ぐぶつかる武田に惹かれたのかなと。逆に言えば、武田にとっても本音をぶつける事の出来る相手。深町のピンチに勇気を持って立ち上がった武田がカッコ良かった。ワチャワチャしながらも近づく心と心が素敵でした。
書き下ろしは、10年後の二人。相も変わらずな二人は、ずっとこんな調子で一緒に居るんだろうねぇ。
同時収録の『さしのみ』は切ない恋の折り合いのつけ方が微妙な二人にもどかしさと切なさが残るのは私だけでしょうか。失恋した他部署の後輩・藤に片思いしてる先輩・西嶋。忘れられない恋に自分の中で決着を既につけたのか、つけたいから西嶋の気持ちを確かめたのか藤の心の内が微妙なんですよぉ…
で、その藤を受け止めた西嶋が最後とっても素敵だったんですけど、全力で幸せになれと願いました。自分の解釈に自信がないので、何度も読み返したいと思います。でも放つ空気感は『ロング~…』に近いものがあって好きです。
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