美少年
」のレビュー

美少年

小野塚カホリ

昭和の官能小説の凄まじさったら!購入した

ネタバレ
2021年10月18日
このレビューはネタバレを含みます▼ 高校生の頃、読みたくてもどーしても書店で買えなかった団鬼六先生。
読みホでこの作品が読めると知りほんとシーモアさんの太っ腹ぶりに連日震えている。
原作ではないにせよ数十年ぶりの思いが叶う。
しかもあの小野塚先生の作品として!
そりゃあ大興奮だよ。

読んだ。
官能小説の何たるかを知らず今まで生きてきたが、
凄い!凄かった!!
そりゃ生温いBL読みには刺激がキツ過ぎるってもんだわ。
自称闇の腐女子なんて言ってた自分が恥ずかしい。
厳密に言うとこれはBLではありませんな。
だって美少年はゲイではなく性同一障害。
つまり女性なのだから。
物語の舞台が戦後間もない昭和20年代である事を考えると、いかに日本舞踊で女形の花形とはいえ、生きにくい事この上ないに違いない。
現代よりも美少年を性の捌け口とするノンケが当たり前にいただろうし(戦時中は特に)、筋モンの傍若無人っぷりも今とは雲泥の差で横行していただろう。
そこに、戦後女性解放運動で強くなった女性のうち、他の女とは違うのよ意識を持った若くて愚かな女が参加する。
すっごい、舞台が整いすぎている!
あとは気弱なイケメン投入で完璧だ。
イケメンくんと美少年のアレやコレやは、身体が男性という負い目と、男とこうなってしまっている負い目でピリピリした痛みと倒錯的なエロスが心地良い。
女の心を持つ美少年が、女特有の思い込み(あなたの為なのよ)でイケメンを追い詰めていくのもヒリヒリとして良い。
さて問題の場面。
これ申し訳ないけれど、やっぱ初見は活字で読みたかったかも?
蛇のような執念とホモの汚名から逃れたかったイケメン、嫉妬ではなく最早男に彼氏を寝取られた憎悪で狂ったバカ女、とにかく面白ければ良いと割り切るS女、そして美と名声のある存在を組み伏せたいヤクザ擬き。
み〜んな若気というおぞましい馬鹿さで狂気を楽しんでいる。
その中で唯一、凛とした存在である美少年はたとえ剥かれようが縛られようが打ち据えられようが、ただただ美しい。
このコントラストがインビなのに熱を持って感動的に美しいのだ。
イケメンの知らなかった後日談もすごく良い。
脅されながらも従った美少年を想像し震えてしまう。
ホント凄かった!
これは創作物として楽しめる人だけが読んでいい作品なのだと思う。現実とごっちゃにしたら何も書けないし何も読めないよ…
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