ラムスプリンガの情景
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ラムスプリンガの情景

吾妻香夜

ハピエンかどうかは難しいところ

ネタバレ
2021年10月22日
このレビューはネタバレを含みます▼ 最初に言っておきますが、物語(フィクション)としてかなりの大作です。見応えあり・涙腺崩壊・恋に落ちてから愛が深まる過程のワクワク感、バスタオル片手に涙しつつ読みました。気になったのは、作者様が後書きにてハピエンと仰っているので、物語としてだけ見ればそうかもしれないのですが…私には簡単にそうは見えませんでした。アーミッシュという方々が実在する事をこの作品で初めて知り、少し調べてみました。また満足いくまで調べられてはいませんが、無宗教の私にとって神に背く行為がどれ程彼らにとって残酷な事か…想像を遥かに超える事は間違い無いでしょう。アーミッシュの教育は8年間とされているらしく、必要最低限の教養のみとされています。仕事収入も最低限で多くは求めない。また、オズが体を売るシーンで35ドルと言っていましたが、円換算すると約4000円弱(当時の円換算は不明)で、そんなに持っていないと言うテオがその時お酒を飲むだけ持っていたとするなら、10ドルあれば良い方かな?とか推測。最後のシーンでオズと共に故郷を去る時、そのままの流れで身支度せずに出て行ったあたり、本当に身1つで何も持たずに故郷を去った。きっと10ドルすらも手元には無かったのでは…。元々アーミッシュの生活として、必要以上に蓄えないのだろう…と思うと、洗礼を受けずに去る若者達は、お金も知識も持たず皆身1つで知らない世界に飛び込まなければいけない。この時代はまだ皆生きるのに必死な頃。帰る家と絶縁し、連絡手段も無い。最後のシーン、テオは泣いてはなかったが笑ってもいなかった。これが最後の青春…。後の「親愛なるジーンへ」の方でトレヴァーが再洗礼の話をしていましたが、そこで少し気持ちが救われたような…。どうか2人がこれからの様々な試練苦難を共に乗り越えられますように。
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