棺にさよならの花束を
」のレビュー

棺にさよならの花束を

rosca

生きるという事。生を終えるという事。

ネタバレ
2021年10月29日
このレビューはネタバレを含みます▼ 初読み作家様。インパクトのあるタイトルに引き寄せられ、分冊途中まで購入して単行本待ちしました。レビュー数もかなり少ないですが、読んで良かったと心の底から思います。『死生観』がテーマとなる作品で、色々な事を考えさせられました。生きるって何だろう…私は何のために生きているのだろう。まだまだ自分の死については考えられないものだとは思いますが、自分の死はどうやって迎えるものなのか、大切な事を考える機会となりました。
心優しくて涙もろい葬儀屋さん・久永の前に現れた自-殺志願者の明星。一見チャラチャラしたような明星の依頼は生前葬と、死後の葬儀。自分の健康なうちに、自身の『生』に区切りをつけたいと言う明星の考えに、最初は私もついて行けませんでした。人の命に携わる仕事に就く私からすれば、健康な若い男性が生きる事に飽きたと言う理由で、自ら命を断つ事に何の理解も出来なかったのです。生きたくても、病気で生きる事が出来ずに亡くなる方の無念を考えると、自死という行為は認めづらいものだと思います。しかしながら読み進めるうちに、明星の死生観にもある程度納得出来るんです。だからと言って自死に理解を示すという訳ではありませんが…
明星の依頼を頼み込まれた久永も、理解しつつも生きて欲しいと願うのは当然の事。その久永さえも、明星の死生観を全うさせてあげたいと葛藤する気持ちもスゴくわかります。何が正しくて、何が間違ってるのかわかりません。間違ってなどないのかもしれません。私の職場の院長は『その人の生き様が死に様』とよく言ってましたが、まさしく明星のキラキラとした生き方は、望む最後の『生の終え方』なんだと…。悔いのないように思うように生きて、未練を残す事なくぱーっと命にサヨナラを告げる。どれほどの人が自分の死生観を全う出来るんだろう…
愛がこの世の未練なら、二人を引き合わした運命に感謝。久永が明星の未練になって、本当に良かった。泣けてしまいます。明星の想いも、久永の願いもわかりすぎる程わかるから…泣けちゃうね。一生一緒に生きたい人の存在がどれほど大きなものか。なんて素晴らしい。生死を見つめ真剣に向き合う二人が恋に落ちるのも自然。生きる希望を見いだした二人に、心からの拍手を贈りたいと思います。
とても良い作品に出会えました。心に残る大切な作品となりました。沢山の方の目に留まるといいなと願います。
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