スタンレー・ホークの事件簿
」のレビュー

スタンレー・ホークの事件簿

山藍紫姫子

「三角」だからこそ成り立つ関係

ネタバレ
2021年11月2日
このレビューはネタバレを含みます▼ アレキサンドライトでは美しい文章に酔いしれましたが、山藍先生のまた違った味を試したくてこちらを読んでみました。
このレビュー、もの凄く難しいです‥。なんて表現したらいいんだろう、「度肝を抜かれた」というのが正直な感想でしょうか。

今作の主要人物は野生的な不良刑事スタンレー、その上司で貴族的な美貌を持つロスフィールド警視、そして神秘的な日本人精神科医のジン・ミサオの3名。スタンレーとロスフィールドは事件解決のために奔走し、ジン・ミサオは警察内部で心理カウンセリングをしています。
お話は凄惨な殺人事件が次々と起こり、その都度スタンレーの野生的な勘とロスフィールドの特異体質が事件解決に一役も二役も買うのですが‥。

今作はどこか宗教的な匂いを感じます。ロスフィールドの特殊能力(宗教的体験)というよりも、ジンのロスフィールドに対する関わり方が宗教的に見え、ジンの彼に向ける献身は時として殉教者のようにも映りました。
ただ、ロスフィールドにとってジンは絶対的な安心感はあれどもある種独特、2人の関係は穏やかではあってもどこか抑圧的で閉鎖的な印象を受けます。
そこに野生的なスタンレーが交じることによって様々な感情が加わり、絶妙なバランスが生まれ歯車が動き出す‥。歪に見える三者三様の関係性が、終盤では納得して受け止めている自分がいました。
単純な三角関係ではなく「三角」だからこそ成り立つ関係、この難しい形を緊張感をもって破綻することなく表現された作者様の偉才に驚愕し度肝を抜かれました。

ちなみにサスペンス小説としても大いに楽しめますが、凄惨で猟奇的な殺人ものが苦手な方はご注意ください。1巻343p、2巻442p、3巻505p、4巻263p、合本版もあります。
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