大好きな妻だった
」のレビュー

大好きな妻だった

武田登竜門

ただ泣けるだけじゃ無い

ネタバレ
2021年11月3日
このレビューはネタバレを含みます▼ ただ泣かせる話ではなく、短い話の中で沢山の要素や伏線が詰まった作品でした。

★ここからはネタバレになるのですが、10頁下から11頁にかけて、主人公の行動をみた看護師が「愛だよね」と呟くシーン。

言葉だけなら、主人公の健気さを讃える暖かい要素なのですが……主人公が淡々と働くコマに「愛」という単語を入れる事で、言葉と行動の不一致からくる違和感を演出。

更に黒ベタ色を次のコマで使用する事により、不穏と不気味さを引き立たせるシーンになっていました。

また、主人公がお小遣いとして妻に渡していたお金も、不穏さの要因の一つとなっていましたね。最終的には、そのお小遣いも一切使っていなかったと分かる描写も描かれており、泣ける伏線になっていました。

伏線といえばもう一つ。主人公が妻を尋ねる最初のシーンです。主人公との会話を切り上げる為にTVをつけていたと思ったのですが、あれは「泣いている自分の顔を映り込ませない為」にTVをつけていたのですね。

ストーリーもさることながら、短い頁の中で巧妙に構成た演出に度肝を抜かれました。ただ泣ける話ではなく、一つの作品として読み応えのある漫画に出会えて光栄でした。
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