遺骨の旅路
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遺骨の旅路

こん炉

哀しみを分かち合い

ネタバレ
2021年11月14日
このレビューはネタバレを含みます▼ 『コールコール』『×ゲーム』が面白い作者様です。今回はちょっと哀しみの深いお話ですが、その哀しみを乗り越える救済の物語です。

兄の元を亡くした弟・時生。兄が骨と灰になった日の夜、兄の遺骨が知らない男に持ち出され、盗まれようとした…
その男は一体何の目的で…。その男の正体は?兄の死に関係するのか?兄の死の真相は?
と、いった火曜サスペンス劇場(テーマ曲は聖母たちのララバイ)風ですが、サスペンスではありません。
遺骨を盗んでまで欲しがるほどの関係は、よっぽどの事。男は元の友人で漣と名乗るが…
兄・元と比べられて自分の存在価値に潰されそうだった弟・時生。経験ある方もいらっしゃるかもしれませんが、身内や他人に兄弟姉妹で比較されて、位置付けられるほど苦しいものはないなぁと思う。それぞれが違うプレッシャーで逃げ出したくなるはず。そして、兄弟の不仲につながるのも悲しい事実です。時生が元との不仲で、自分を責める気持ちもわかるし、死の真相や自分の知らない兄を知りたいと思う気持ちもわかります。嘆き悲しむ以上に、辛い事です。
そして、友人・漣と兄の遺骨と共に、兄が行こうとしてた旅路を歩く時生。普通では考えられない旅路で、何を掴むのか…漣の悲しみが尋常ではなく、思った通りの答えに納得です。
最終的には、死の真相はそうであったのではないか?という想像を越えない感じでしょうか。時生も漣も自分を責めないで欲しいですね。結局のところ、元にしかわからないのです。嘆き悲しむよりも、思い出を持ち寄って元の話をしながら、ずっと忘れないであげて欲しい。人の死が二度あると聞いた事がありますが、一度は肉体の死、二度めは忘れ去られた魂の死、だそうです。だから、時々思い出してあげて欲しいと思うのです。

時生が漣に恋に落ちるのが、少し早急な気がしないでもないですが、そんな恋があっても不思議じゃないし、二人の気持ちが救われて幸せを感じられるなら、それでいいんじゃないかなという気がします。

う~ん、思いを深く溜め込んだ5年分の愛あるエチが素敵でした。
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