僕の美しいひと
」のレビュー

僕の美しいひと

カシオ

SFとおとぎ話の融合のよう

ネタバレ
2021年11月23日
このレビューはネタバレを含みます▼ ★全寮制の名門校に編入した忍とルームメイト・吉良のカーストテイストストーリー。

★訳アリっぽい忍にテストで負けた吉良は、忍を構うようになる。心の内を話してくれた吉良に、自分も秘密を伝えたいと忍は思ったが…。

★大人の童話のようだな、と思いました。キャラたちの情念とエゴに胸騒ぎを感じ、少し悲しくて残酷な展開は、一気に読める面白さでした。人間とは何か、を問うメッセージ性もとても良かったです。吉良の母親のレストラン給仕への嫌悪と吉良の忍への仕打ちは、同じ感情から派生しているように思いました。罪悪感はエゴのささやきですね。人は、自分のエゴに翻弄されながら、それを否定したい矛盾に苦しむ。登場人物の一貫性の無さが、人の弱さを表しているな、と思いました。大人のおとぎ話は、ゾッとするような結末のモノがありますが、この話は救いがあって読後感が良かったです。

★描き下ろしと電子限定おまけ含めて252ページ。本編は仄暗さが残るラストでしたが、描き下ろしが甘かったです笑。おまけも面白くて、そういえば、本編もクスッと笑えるコマが差し込まれるんですよね。

★兄・正嗣の「人間の階級」という言葉に、今後、忍のような存在が当たり前の世界になったとしても、今のままでは、生まれ方や場所で、その「差別化」はなくならないよ、と言われているような喉に骨が刺さったような余韻が残りました。
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