このレビューはネタバレを含みます▼
1話目と2話目で主人公が入れ変わる連作と2話+後日談からなる短編の二本立てです。
草間先生の描かれる男達は本当にカッコいい。
男臭い男らしい男がいっぱいで眼福でした。いい男感が漂っているのに時に可愛らしさが垣間見えるのがすごく好きです。
「夜更けに花降る」思い込みが激しい生真面目男と色気たっぷりの怪しい男の組み合わせが面白かった。コミカルで可愛い話で楽しかったです。
「明け方に止む雨」自分が信じていたことが覆された時の、惑いともがきの描写がすごく上手い。ストーリーはシリアスだけど重くはならず、悲哀や遣る瀬なさなど人間らしい感情を描いているのが良かった。
1話目もだけど、出会った人によって今までの自分にはなかった新しい価値観を知るのが面白いなと思いました。
「歌わない鳥」「風景画家と肖像画家」前の2つに比べるとわかりやすい、ドラマチックで優しい話です。
窮屈な場所から抜け出した、思い切った逃避行に胸がスッとしました。逃避行の先に落ち着いた穏やかな暮らしがあったのも良かった。救いのあるあたたかなラストが好きです。
短編集ですが物足りなさは全くありません。草間先生の世界を堪能できる満足感の高い作品集でした。