500年の営み
」のレビュー

500年の営み

山中ヒコ

尾瀬に行ってみたくなりました。

ネタバレ
2021年12月8日
このレビューはネタバレを含みます▼ 500年って途方もない。
途方もなくって呆然と立ち尽くすしかない。それでも生かされる時間の長さだけ考えるとあまりの孤独に考えるのさえやめたくなるような。
愛する人の死に耐えかねビルから飛び下りたとらが目覚めたのは250年後の世界だった。
幸せとは?と問いかけながら読みたくなる作品でした。
人から認められなくても大好きな人の目に自分が映っているだけで、好きだよって言ってくれるだけで良かったとら。完璧なアンドロイドではなく3割減のアンドロイドを愛しいと思ったとら。
人間の考え方の矛盾、その美しさと愛しさが1冊を通して言葉少なに表現されているところが素敵だなと思いました。
途方もない時間に放り出されても幸せの方向へ歩き出す人の強さと、そうさせるだけの愛をくれた存在がいたこと。
切なさで胸が押しつぶされそうになります。
想像の余地を残したラストは2人の幸せを願わずにはいられない。
何食わぬ顔で、でも悠然と流れる時間をこの1冊で全身で感じられるって凄い…辛いけど温かさも散りばめられたストーリー感動しました。
大事に読みたい作品です。
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