ぼくは麻理のなか
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ぼくは麻理のなか

押見修造

サナギから蝶になるための旅

ネタバレ
2021年12月8日
このレビューはネタバレを含みます▼ 読み放題にて一気見。レビューに『気持ち悪い』と言う意見を多く見受けた。しかしその何とも言えない気味の悪さ、言葉にすると『気持ち悪い』となってしまう概念的なものを作者は描きたかったのかなと思う。恐らく押見作品はそう言った言葉にすると稚拙になるが、人間の誰しも持っている本能的なセンサーに触れると間違いなく反応してしまうのだと思う。それが『面白い』ともなれば『気持ち悪い』にもなる。
ここがハマれば『この作者の作品は気味が悪いけどなんか読んでしまう』となるのではないか。
押見作品は「美しさの中にある醜さ」「醜さの中にある美しさ」を見いだし、それを描くのが上手いと本作を読んでいて強く思った。できるなら見たくない醜さすらも特にこの作品ではどこまでもそこを描き尽くしていたように思う。
子供でもなく、大人でもない。自分とは何なんだろうというある特有の年齢に生まれる葛藤、周囲からのイメージで形成された自分ではない自分を探し、サナギから蝶へ脱皮する話だったと読了後感じた。
(あくまで余談・推測の域を出ないのだが『血の轍』然り母親への屈折した何かを持っているように感じていた。本作のあとがきにて(どの巻数かは忘れた)母親への何とも言えない思い出みたいな事が描いてあったのを見て個人的には合点がいった)
押見作品はそこそこ読んできていたのだが、割とポップなキッカケから思いがけない展開、そしてエンディング。
まさかそんなオチかい?とは思ったが、良い意味での驚き。
どうにも救われないオチとかではなく、一応ハッピーエンド?だった(作品は一応ハッピーエンドっぽく終わってはいるが、今後の彼女たちの交友関係や家庭も安泰とは言い切れないリアルさを孕んでいるようにも受け取れた)ので、いいエンディングだと思った。
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