初恋思い出したらキスしよ?
」のレビュー

初恋思い出したらキスしよ?

タナ

優しい空気の中に激情がチリリ

ネタバレ
2021年12月10日
このレビューはネタバレを含みます▼ ●160P強。中盤までふんわり曖昧な雰囲気で話が進むので、ちょっとだけ根気が要るかもしれません。幼い頃に叶えられなかった約束を今度こそ、というお話です。(以下盛大にネタバレになりました…すみません…)
●飄々とした態度でタケルに近付いて、「俺を好きになって」と言う章。実は縁者だということが分かって、タケルは章が自分をからかってると思い込む。複雑な家庭環境で育ったタケルは、人に捨てられること、嘘をつかれることが怖くて、それなら自分から章に近付いて手酷く捨ててやろうと考えるように。
●二人は幼い頃に出会っていて、そのとき寂しそうなタケルに「ずっと一緒にいよう」と声をかけた章。でも子どもの思い付きなんかが大人の事情の前には叶うはずがなくて。タケルは章に嘘をつかれたと感じて心を閉じてしまうけど、章は「大人になったら約束守るから!」と言い放つ。それを章は今実現させたいと、タケルの居場所になりたいと、過去を告げないまま奮闘しているのです。
●でも、過去のことが判明するよりも先に、タケルは「また一人になる」ことが嫌だと感じて、自分でもよく分からないままに章にかじりつく。この、タケルが章の身体に跡を残したがる激しさがすごく良い。章がどこかへ行ってしまうのが怖くて、必死に自分の跡をつけてる。そんなタケルの内面が分かってて「大丈夫だよ」って応える章も優しくて。
●描き下ろしも含め、とても読後感が良いです。(描き下ろしのP.157〜158の間って、ページ飛んでたりしませんか…?)『あつめるひと』も読んでみようかな?
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