さくらのあわい
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さくらのあわい

三田織

情景が浮かんで来そうな…

ネタバレ
2021年12月17日
このレビューはネタバレを含みます▼ 短編も素晴らしい三田先生。長編よりも、短編の中にドラマをまとめあげる方が、力量がいるし難しいと思うのですが、短編が上手い先生は、長編もやはり素晴らしい。『ほたる』のお話の余韻残るまま、こちらの作品も購入しました。やっぱり良かったぁ~。

亡くなった先輩の夢よく見る純。彷徨ってるのではないかとお寺に相談に行くと…
純が何故、先輩の事が頭から離れないのか。憧れを通り越して、淡い恋心を抱いていたのか…自分自身の気持ちがはっきり自覚出来ていないまま、先輩が逝ってしまい、想いを何処にやればいいのか行き場がないような気がしました。迷子の心を抱えたままで、辛かったはず…
純の話を聞いてくれた寺の次男・善行は、テキトーに見えるけど、ちゃんと純の心に寄り添って、答えを見つけられるように導いてくれた。亡くなった人にとらわれて哀しむ純には、善行の重くならないキャラが良かったです。

散る桜の花びらが儚いように、失った仄かに淡い恋心も切ないです。四季が移り行き、また春を迎え桜は新しい花を、咲かせます。人の心も移り行き忘れ去られる事もあるかもしれないけど、先輩からもらった優しさを、純はきっと忘れないと思います。桜の花びらで海の表面がピンクになると、思い出してあげて欲しい。

この作品の描写が美しく、散って舞う桜の花びらや、淡いピンク色の桜の海が、色を持って目に浮かんで来そうです。美しいですよね。

恋を絡ませてちょっかいかける善行が面白くて、いやいやあなたが恋したんじゃないの?と突っ込みたくなりました(笑)さて、純はどうかな。

人を想う心の美しさに、とても優しい気持ちになれるお話でした。

もっともっと、三田先生の新しい作品を、待ち望んでいる方は多いんじゃないでしょうか。切なる願いですね。
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