BASARA
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BASARA

田村由美

綺麗事じゃない、愛の物語

2021年12月22日
大変今さらながら、田村由美先生の著作を初めて手にとりました。
舞台は、現代の文明が崩壊した未来の日本。
ただ村人たちを助けたいだけだった更紗が、王族を追放し新しい国を作る、という大きな流れの中で、"運命の子供"として民を率い革命を起こすことを期待され…。
たった15歳の少女が背負うには、あまりにも重い運命。
何度も壁にぶち当たり、理想と現実の差に打ちのめされながらも成長していく更紗の幸せを祈るようにぺージをめくりました。

多くの魅力的な登場人物の中でも、とにかく揚羽の生き様がかっこよすぎてしびれます…!
奴隷として育った過去がありながら、いやだからこそ、気高く崇高な揚羽の魂が眩しくて、終盤の神がかったような美しさは息を飲むほど。
彼の中に光る、揺るぎない信念がそうさせているんですよね。
誰にどんな扱いをされても決して魂は汚されない、その強さに心を打たれたし、わたしもそうありたいと思いました。

相手を激しく憎みながらも、愛さずにはいられない…人の心はままならないものですね。
綺麗事ではない、様々な形の愛を描いた作品。
同時に、国について、政治について、自分の生き方について、考えさせられる物語でもありました。
20年ほど出遅れましたが、この作品に出会えてよかった!
これからも読み継がれてほしい名作です。
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