壬生義士伝
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壬生義士伝

浅田次郎

幕末の侍という、強くとも悲しい生き様。

2021年12月24日
新選組・吉村貫一郎という人物を自覚的・多角的に描いた名作。その心優しい百姓上がりの侍を知る人に当時の事を聞いた回想を織り交ぜながら物語は進んで行きます。その1つ1つのエピソードがやがて点になり、読み進めて行く度に吉村貫一郎という侍を好きになって行きました。

幕府の栄える時代は厳粛たる身分制度があり、個人の価値観や命の重さは御上御上と、判断は上の物が決めるモノだと捩じ伏せられていました。吉村貫一郎だけでなく、そんな時代に生きる人々の真たる考えや感情も書き切られている作品に感じました。

史実としても幕末から維新後で、その時代の考え方が異なるので、時代背景をある程度知っておいてから読むと物語により一層の厚みが出てくると個人的には思います。珠玉の名作と言っても過言ではありません。
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