天才は総じてどうしようもない ~百鬼カントクと凡人たち~
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天才は総じてどうしようもない ~百鬼カントクと凡人たち~

カサイウカ

泣かせるねぇ…

2021年12月25日
うぅ…少ないレビュー数。タイトルと短い無料立ち読みでは、選択肢から外れるのでしょうか…確かにラブコメで面白可笑しく笑えて、楽しいです。そして、カサイウカ先生の真骨頂、徐々に『泣かせる』深みにハマっていく展開なのです。私の中では『泣かせのカサイ』と命名しています。『例えば雨が降ったなら (1月7日まで半額 )』例えば雪が融け合うように』に見られるように、しびれる大人の恋や愛が多いカサイウカ作品ですが、この作品もまたしびれるオジ恋なんですよ。
映画監督・百鬼に憧れて、押し掛け従業員となった四ツ森。繊細な愛や寂しさを描いた百鬼は、実は傍若無人な暴走下半身だった…?
四ツ森がこれまたポジティブなチョロ男くんで、百鬼の為なら『スティック』にもなれる…いやいや棒扱いだよ?いいのか四ツ森くん。と、まぁこんな風にラブコメとエチでワチャワチャした展開かと思っていたんです。が、オジ恋百戦錬磨なカサイ先生は、やっぱり切なさの匠なのです。
四ツ森を百鬼の映画の虜にした作品から五年。作りたいのに作れないワケとは…哀しいね…
過去を引きずり、立ち止まったまま前に進めない百鬼も辛いけど、四ツ森の憧れがいつの間にか恋となり、そんな百鬼を見ているのも辛いですね。好きだからこそ知りたくて、でもそれが心を磨り減らすようでいたたまれない。
それでも前に進んで欲しい切実な四ツ森の想いが、胸にジーンと響きます。触れて欲しくない心の内を踏み込まれた百鬼の逆鱗にさえ触れ、ドア越しに百鬼に語りかけるシーンがキュッと喉を締め付けるのです。好きで、側に居たくて上京し、今度は好きな人の為に離れる覚悟で伝える想い。泣けてしまいます。これがカサイウカ作品です。
きっと、過去の想いから動けない事にもがき苦しんで来たであろうと思う百鬼ですが、人の熱い想いは、人を動かすものですね。モヤモヤと抱え込んで来た何年間もの好き。吐き出して、宙ぶらりんな自分自身にケリをつけるには、かなりの勇気がいったと思います。でも、一歩前に進めた事が何よりも周りのみんなも喜んだはず。
気持ちを受け止めてやりたかったけど、受け止める事が出来なかった千神の「ごめん」もなんだか切なく響いて聞こえた気がしました。
去る四ツ森、追いかける百鬼で涙腺崩壊でした。
だけど!最後までスティック扱いには笑えてしまいました。笑って泣いてたまらんです。
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