一度きりの大泉の話
」のレビュー

一度きりの大泉の話

萩尾望都

つ、疲れた…

2022年1月6日
そもそも私が読んだのが間違いでした。
「作家は作品あってのもの、御本人がどんな方だろうと当時何があったのだろうと関係ない」と普段から思っているような人間だからです。

萩尾先生は大好き、でも浅いファンなので好きな作品は銀の三角、バルバラ、残酷な神など。
そう、近年の表現と絵柄に痺れているのです。
子供の頃に見かけたポーなどはロマンティック!綺麗!難しい!って感じでした。
それが今回ポーの一族を最新作含めて揃えたくなって全巻読破!
この本が発売時からネットで部分的大騒ぎされているのも気になっていたので、その勢いで二時間半かけて一気読みしました。←だから疲れるんだ…

重い重い辛い話です。
平易な風に穏やかに綴られているけれど、これほどの才能を持つ人が封じ込めずにはいられなかった苦しみに胸が痛みます。
そしてそれを発表せずにはいられなかったまでに追い込んだ状況も。
時代背景もあり、お母様との確執もあり、後ろ向きで悩みがちなご性格をしていらして、驚くほどの謙遜…否、卑下に凝り固まっていますが
大声で叫びたい。「萩尾先生がバカで表現者としてダメなら世の中の芸術家は偽物なんだよ!!!」

本当にこの話はしたくなかったのに感満載。
萩尾先生はこの本を著してスッキリした、気が晴れた等は全くなかっただろうな。
内容は全てのファンが読みたいものではありません。
ファンの為に書かれたお話ではないから。
漫画も差し挟まれ、未発表のクロッキー、ネームも掲載されていますが、重度沼堕ちモー様マニアにしか「お宝!!」ではないと思います。

私は浅い軽い薄いファンとして、これからも先生の絵柄と表現に震え、感動し、密かに新刊を買い続けたいです。
現役を続ける大御所の先生方は衰えが激し過ぎて読者のほうが引き際を考えたくなる事も多々ありますが、
萩尾先生には健康に長生きして頂き、ますます冴え渡る筆致と輝く才能で私達を魅了して下さるよう祈ります。
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