梔子島に罪は咲く
」のレビュー

梔子島に罪は咲く

綺月陣

臭覚を刺激するBL官能小説

ネタバレ
2022年1月10日
このレビューはネタバレを含みます▼ 飛ぶ鳥落とす勢いのデザイナー慎也と男娼タカオの物語。ゲイでもない慎也が騙されたと思って連れていかれた先に息を呑むほどの美しい男がいて‥、といった幕開け。
今作は官能小説の如く濃厚な濡場が至る所で描かれていて、過剰な濡場は不得手なので最後まで読めるか途中から不安になりました。が、そうも言っていられないほど中盤から慎也が加速度的に堕ちていく蟻地獄のような展開にヒリヒリしっぱなし。そんな八方塞がりの中からタカオが照らした一縷の望みに救いが見られますが、それまでの息詰まる展開がなかなかに読ませました。それにしても慎也の独白には切迫感というか息詰まるものがあり、臨場感たっぷりで読み応え大。
作品全体の雰囲気は、(あくまで個人的な感想ですが)松本清張の鬼気迫る日本映画のよう。そして随所に挟まれる梔子の香り、慎也が正気を保つ拠り所のように感じ無性に梔子の香りを嗅ぎたくなる作品でした。
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