恋する暴君
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恋する暴君

高永ひなこ

最高の「割れ鍋に綴じ蓋」

2022年1月11日
正直言って、1巻の中盤までは、ドン引きでした。
暴君・宗一は言うに及ばず、哲博も健気なようで実は身勝手で、お互いにエゴをぶつけ合うばかり……。こんな二人で恋ができるの?それ見て楽しいの?と、危うく挫折するところでした。
……が、ストーリー自体はテンポよし緩急よしで、ついつい読み進めていくうち、あ~この二人に限ってはこれでいいのかも、と腑に落ちてしまったんです。お互い無茶苦茶なことしながら、なんだかんだ互角に渡り合えてるし、受け入れ合えてるし、そもそも波長が合っちゃってるし……要するに相性ぴったり。いわゆる「割れ鍋に綴じ蓋」っていう。
そこが納得できたら、あとは素直に楽しくて、ダメすぎる二人がドタバタラブコメを繰り広げながら少しずつわかりあっていくのが可愛くて可愛くて。巻が進むにつれ甘いシーンも増えます(当社比)。そして、宗一は哲博の笑顔が好きなんだな~と窺わせる描写が1巻につき1回ぐらいはあって、そういう言葉にはならない表情の描写も大好きです!!
そして個人的には、2巻で明かされる哲博の過去にまつわる話が、刺さりました。
さらりと語られているけど……裏切り、偏見、確執……10代であんな経験は本当に辛い。哲博が時々、異常なほどネガティブになるのもそれが原因だし、それを隠してにこにこ笑ってる哲博の強さ、優しさ、愛情の深さが切ないです。
彼のこの重い重い過去と、重い重い愛を、潰されずに受け止めるのって、宗一みたいな性格じゃないとできないかも。
はじめは哲博が宗一を救う天使(エンゼル君だけに)と思っていたけれど、シリーズ中盤からは、宗一が哲博を護り導く聖母に見えてきました。
幸せになってほしい二人。でもいつまでも暴君&忠犬(ときどき狼)の二人でもいてほしい。長いシリーズだけど、追いかけ続けます!
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